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「旅の小舟」2022年 

 

りの  中村 菜都子 版画展  長崎  外海  旧出津救助院          2022.11.1 tue - 13 sun

 

祖母の故郷・長崎県五島列島を訪れたことをきっかけに、長崎の歴史、潜伏キリシタンの物語、そして聖書から着想を得た制作をはじめます。自ら刷ったリノ版画や木版画をコラージュし、さらに金属板、螺鈿、卵殻、箔、糸などの素材を用いることでモノクロームの版画に挿し色としてのアクセントやユニークな質感を与えています。様々な素材や技法を合わせた独自性に富んだ作風の原点は、製紙会社に勤めていた父や手工芸を嗜んでいたという母との原体験にあると作家は語っています。また、学生時代に「金属工芸」と「グラフィックデザイン / イラストレーション」という性質の異なる創作課程を二つ専攻していたことも、作家のもつ自由なものづくりの思考や思想を形作る大きな要素といえるでしょう。 中村はこれまで、聖ルドビコ茨木、天正遣欧少年使節、セビリアの聖母、マリア観音など長崎の潜伏キリシタンの歴史をモチーフに制作を続けてきました。この度、お告げのマリア修道会の協力のもとキリシタンに大変ゆかりの深い旧出津救助院にて、本展に合わせて制作された新作と共に、中村が長崎・パリ・東京と旅をしながら制作してきた作品をご紹介いたします。ぜひ、この機会にご高覧ください。 

 

 

 

 

展覧会に寄せて|中村 菜都子 Natsuko Nakamura

アーティスト

 

今から7年前、長崎の旅の記録を「祈りの島」という版画作品にまとめた。それ以来、長崎の歴史やキリスト教文化、 潜伏キリシタンについてさらに知りたいと思うようになった。 2017年、母校女子美術大学よりパリ国際芸術都市という施設にて1年間の滞在制作の機会を頂いた。その滞在中に、長崎から旅立った天正遣欧少年使節の軌跡を辿るため、パリを拠点にポルトガルを巡り、長崎の歴史、キリスト教文化、 版画、そして自分自身に、ゆっくりと向き合うことができた。 帰国後、Travelersというタイトルのグループ展に参加し、パリ滞在中と帰国後に制作した「わたしはあなたに向かって 両手を広げ」と「島の記憶」という比較的大きな作品を発表した。展覧会開催中にギャラリストから「なぜ版画を制作 するのか、なぜ刺繍などの装飾的な表現をするのか」という質問を向けられた。そして、女性的、装飾的、工芸的作品 を取り巻く現代美術世界の現状について話をしてくれた。そこで私は、次のように返したと記憶している。“母は私が幼い頃からフランス刺繍・レース編み・アメリカンキルト・ポジャギ・刺し子・服飾等ありとあらゆる手工芸を嗜んでおり針と糸が身近にあったこと、美大での専攻が金属工芸であったこと、イギリス留学中にリノ版画に出会ったこと、そしてそれら全ての媒体や技法が自然発生的に私の内側から湧き出ては手によく馴染み、なぜそれらを選んだかなど説明がつかない”と。 それ以来、あまり気にせずに生きてきた「女性である」ということをしばし意識するようになった。ここ数年で女性を取り巻く意識は変わりつつあるが、環境や状況はどれほど変化してきたのか。これらの問題は単に女性対男性ということではなく、女性たちの中にこそ、女性を息苦しくさせる概念が生き続けているという側面もあるのではないかと思う。母の創り出す美しい刺繍やキルトは、母の抱くもしくは抱かされる「理想の妻・母親像」を象徴した作品群であり、 その「理想の妻・母親像」のようなものに私たち女性は長らく苦しめられてきたのではないかと思うようになってきた。 そのようなことを思いながら、改めて長崎や潜伏キリスタンの歴史を振り返ると、その物語に登場するのはやはり男性ばかりで女性の名前はあまり出てこない。聖書の中には聖母マリア、失楽園のエヴァ、マグダラのマリアなど、様々な女性が現れるにも関わらず。 母校の話に少し戻すと、女子美術大学は1900年に芸術による女性の自立・女性の社会的地位向上・女子芸術教育者の育成を理念に建学された。同大学に私費で「大村文子基金」を設立した大村智博士<2015年ノーベル生理学・医学賞受賞 >の助成を受け、2017年にパリでの滞在制作の機会に恵まれたこと。そして今回、女子美術大学創立の時期と同じ頃、フランス人宣教師のマルコ・マリー・ド・ロ神父の手により女性の為の授産施設として設立された旧出津救助院で個展開催の機会を与えられたこと。この意味のある偶然 - Meaning of couincidenceを大切に、医療や教育を通して女性の社会的地位向上に貢献してきた人々の思いを繋いでいけたらと思う。 長きに渡り長崎市西出津町(旧外海町)に貢献し続けてきた、フェルム・ド・外海代表 日宇スギノ氏とお告げのマリア修道会のご協力のもと、私が長崎を起点に紡いできた物語を、旧出津救助院にてご覧いただけるご縁に心から感謝しています。新型コロナウイルス感染症の影響で当初の計画から3年遅れて、2022年今秋。直接皆様にお会いし、ご感想やお話を伺えるのを楽しみにしております。

 

 

 

有志より、展覧会に寄せて|日宇 スギノ Sugino Hiu

フェルム・ド・外海(Ferme de SOTOME)代表

 

中村菜都子先生の作品展覧会の会場となる旧出津救助院(国指定重要文化財)のある長崎市外海(そとめ)地区は、世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の中で「外海の出津(しつ)集落」と「外海の大野集落」という二つの構成資産を有し、特異な文化と五島灘に沈む夕陽など美しい自然に恵まれています。 明治から大正時代にかけて外海の村人の魂と暮らしの救済に尽くされたフランス人宣教師マルク・マリー・ド・ロ神父 (1840~1914)が建造した出津教会堂、大野教会堂(いずれも国指定重要文化財)があり、さらには作家・遠藤周作 氏の代表作『沈黙』の舞台の一つになった所として知られています。 フランスに在住されたことのある中村菜都子先生の版画作品展が外海で開催されること、本当にありがたいことです。 ド・ロ神父の故郷・ヴォスロール村(ノルマンディー地方)と長崎市は姉妹都市関係にあり、長崎外海・ヴォスロール姉妹都市委員会の会長を務めさせていただいている私にとっても大きな喜びであります。 中村先生は昨年、外海の出津文化村内にある姉妹都市公園で催された「外海文化市」会場において、版画のワークショップをやっていただいたり、ド・ロ神父の親族の末裔の方との海を越えたオンライン対談にも加わってくださいました。 外海の祈りとか愛、自然美といったイメージを、先生の優しさと国際的なセンスにあふれたタッチによる版画は、きっと来場する人々の心を魅了させてくださるものと期待しております。展覧会の期間中の11月4~6日には、「地域づくり 団体全国研修交流会長崎大会」が長崎市他で開催されますが、全国各地から大会に参加される方々にも、ぜひご覧になっていただきたいものです。

 

ド・ロ神父の足跡を知ることができる記念館や出津教会、一般社団法人『ド・ロさまの家』が管理運営している旧出津救助院が集まるエリアの一角にあ る小さなレストラン『ヴォスロール』の店主。ヴォスロールはド・ロ神父が生まれ育ったフランスの小さな村の名前。また、地域活性化グループ『フェル ム・ド・外海(そとめ):フランス語で「外海の農家・農場」の意』の代表でもある。活動の中で『ド・ロさまの家』と連携し『tabedokoro ヴォスロール』 が生まれた。「ド・ロ神父の故郷『ヴォスロール』と地元の家庭料理を提供することで、ド・ロ神父の愛の精神をお伝えできればと思っています」

 

 

 

有志より、展覧会に寄せて|石本 千代乃 Chiyono Ishimoto

五島市出身アーティスト

私たちの出会いは五島でした。2018年、地元で開催していた私の個展会場に菜都子さんが足を運んで下さった事がきっかけとなり、お互いの拠点である東京に戻ってからも交流を重ね現在に至っています。初対面から2ヶ月後、菜都子さんがSNSに投稿した“長崎記”を読んでとても感銘を受けたことを今でも鮮明に覚えています。長崎市内・外海地区・小値 賀島・野崎島などを訪れ、各地の今昔の歴史や風土、そこに暮らす人々の何気ない日常が綴られた物語のような文章でした。五島を離れたからこそ感じていた外から見た長崎や五島の歴史を、人に伝える際に上手く言語化出来ずにいた実感が自分にあったのですが、それがようやく腑に落ちた感覚でした。そんな体験をした翌年、菜都子さんが参加された グループ展「Travelers」で初めて作品を拝見し、彼女の文章から受けた印象と同じ物語性を感じました。そこに暮らす人々とその土地がもつ特有の時間の流れ。それには、風土や歴史と永いあいだ向き合ってきた人と場所が 織りなす独自の空気感やリズムを感じます。旅の記録として、目にした風景を切り取り作品とする人は多いでしょう。 菜都子さんの紡ぐ「旅の物語」は、歴史を丁寧に紐解きながら、時と場面を重ね合わせるように様々なモチーフや素材がコラージュされた作品で、説明地味た堅苦しさが排除され、決して拙速ではない緩やかな時間を感じさせてくれます。作品の多くに描かれている星空は、時空を超えて過去と現在を繋ぐ旅先の夜空なのかもしれません。 ぜひ、この機会に、長崎を起点として生まれた「旅の物語」から何か感じとっていただけたらと思っています。

 

五島市生まれ。五島高校を卒業後上京。東京を拠点とし、おもに油絵とジクレー版画を制作するアーティスト。1998年フランスの前衛的な画壇への登竜門とされるフィナール国際美術展に初出展し初入選する。数年間、サロン・ド・フィナールに所属し東京・大阪・パリにて作品を発表。2000年ニューヨー クにてグループ展「Young Art Japan 2000」に参加し、展覧会と並行してブロードウェイで単独ストリートギャラリーを展開。2001年池田満寿夫記念芸術賞で準入選。2003年フランス・ルーブル美術館で開催された「美の革命展」において来場者の投票による「トリコロール芸術平和賞」およびパリ画壇 の審査員の選出で「グランプリ賞」を与えられる。近年では、スペイン・バルセロナ、フランスのパリ、ストラスブール、中国・広州などで作品の展示や 制作を行っている。

 

 

 

 

旧出津救助院について

 

『外海の人々を貧しい生活から救いたい』 1879年、外海地方に赴任したフランス人宣教師のマルコ・マリー・ド・ロ(Marc Marie de Rotz)神父は、地域住民を窮状から救うために、農業指導、漁業指導、医療事業、教育事業など様々な活動をいたしました。旧出津救助院は、女性 のための授産施設として、1883年に創設されました。神父が自ら創立し養成した聖ヨゼフ会 (のちのお告げのマリア修 道会)の会員たちの協力を得ての創設でした。2003年12月、これらの施設の一部は、貴重な明治初期の授産・福祉施設 の遺構として国指定重要文化財に指定されました。旧出津救助院は、当地域の歴史と文化を語るうえで欠くことができない重要なものとして2013年4月に施設の保存修理を終え、現在広く一般に公開しています。 (旧出津救助院ホームページより) カトリック信仰を礎とした深い人類愛によって設立された授産活動の場で、現在の長崎市西出津町出津文化村エリアに位置しています。複数の資産で構成されており保存・修復を経ながら現在に至っています。


 

 

展覧会詳細

会 期|2022年11月1日(火)- 2022年11月13日(日)

時 間|火~土 9:00 - 17:00 日曜 11:00 - 17:00 <最終受付16:30> 

休 館|月曜 

場 所|旧出津救助院

住 所|長崎県長崎市西出津町2696-1 

入場料|大人400円/中高生250円/小学生以下200円(団体は50円引き)

※この度、旧出津救助院のご好意で展覧会を開催させて頂いております。                 

展覧会は非営利ですが、入場の際は旧出津救助院の入場料をお支払いの上ご入場ください。

 

主 催|個展 祈りの旅の友 有志

旧出津救助院HP   |https://shitsu-kyujoin.com

作家HP                |https://www.natsukonakamura.com

展覧会や展示に関するお問い合わせ |natzcoco@hotmail.com

旧出津救助院に関するお問い合わせ | https://shitsu-kyujoin.com

協 力|お告げのマリア修道会、フェルム・ド・外海、

    公益財団法人 長崎バス観光開発振興基金女子美術大学

 

中村 菜都子 プロフィール |

東京生まれ。1986年~1991年京都、2002年~2008年ロンドン、2017年パリ在住。2018年五島列島福江島滞 在。祖母の故郷、長崎五島列島を訪れたことをきっかけに、長崎の歴史やキリスト教文化について興味を持つ。旅 を通して出会った様々な人物の数奇な運命を辿りながら、自分自身を知る旅をしている。

 

主な展覧会歴 

2022 四月の庭 / エデンの園 | ギャラリー水巣 (新潟)

2021 第8回ノエルの贈り物 | WATERMARK arts & crafts (東京)

2021 版は物語る | 文房堂ギャラリー (東京)

2019 Travelers | MAHO KUBOTA GALLERY(東京)

2018 Contemplativa ー 観想する生活 | タンバリンギャラリー 個展(東京)

 

主な受賞歴 

2019 令和元年度(第19回) 女子美制作・研究奨励賞 受賞

2016 平成29年度(第18回) 女子美パリ賞受賞女子美パリ賞 受賞

2015 第6回山本鼎版画大賞 入選

2014 第20回 鹿沼市立川上澄生美術館 木版画大賞 入選

 

経 歴 

2005 ロンドン芸術大学 ロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーション卒業

1995 女子美術短期大学 造形学部 生活デザイン学科 金属工芸専攻 卒業  

プレスリリース配信元 「個展 祈りの旅の友」 有志

広報担当石本 千代乃

プレスに関する問い合わせ先 chiyono.ishimoto@gmail.com

 

 

交通アクセス

◎バス

JR 長崎駅前から「板の浦(桜の里ターミナル経由)」行きに乗車

約1 時間15 分後、<出津文化村>で下車、徒歩で5-10 分

※直行は朝と夕方のみ。

<桜の里ターミナル>で「板の浦」行きに乗り換えることもできます。

 

◎車

JR 長崎駅周辺より国道202号線を北上し約50 分。

JR 佐世保駅周辺より国道202号線を南下し約1時間25 分。

旧出津救助院の駐車場は3 か所に分かれており、普通車が約45台程駐車可能です。

現在駐車スペースにあまり余裕がないため、満車の場合は、付近の駐車場をご利用ください。

 

 

 

 

 

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